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  怪談!熊さんの百物語

喜屋武岬の話

これは地元の海んちゅから聞いた話なんですが、結構有名な話で、 この海域で漁をする海んちゅには恐れられています。
沖縄本島南部に位置する喜屋武岬と言う所は、戦時中に沢山の兵隊や民間人が身投げ や自決した所で、丁度バンザイクリフに似ています。ここの海に 潜ると、「出る」と言うもっぱらの評判なんです。

(by 上原潤


喜屋武(きやん)岬の話

 僕の知り合いは、今でこそダイビングショップを経営していますが、 昔は海んちゅとして生計を立てていました。網や釣り竿も使いますが、 スキューバを使ってのスピアガン漁(いわゆる水中銃)をするのです。 彼等にとって「良い魚」とは、市場に持って行って高く取り引きされる 高級魚を指します。僕の田舎では「アーラミーバイ」と言う魚がそれ なのですが(内地では、アラとかクエとか言います。2M級のものだと 一本百万位で競り落とされる料亭用の魚です)これは岩場の割れ目等 に住んでおり、網や竿ではなかなかゲット出来ない魚種なんです。 だから、スキューバを付けて水中銃で突いて取るわけです。

 その日も彼は稼ぐ為に潜っていました。夜ですからライトを装備して 潜る、いわゆるナイトダイビングですね。彼は深場の割れ目をライトで 照らしながら探していました。すると思惑通りミーバイが居て、早速 突き捲って取ってたわけ。でも人間は欲深いもので、もっと深い所の 良さそうな岩場に、もっと大きいのが居るのでは無いか?と考えて しまうのね。彼は更に深みへと行った。

 するとどうだろう。2M級のミーバイが居たわけ。彼は身の毛が よだったと言っていた。「これは100万、これで100万!」欲の 皮をつっぱらかしてミーバイと格闘した末に仕留めたそうだ。彼は 意気揚々として浮上して行ったそう。

 ここからがおかしいのね。岸に向かって泳いでいるんだけど、何かが 引っ掛かっているのか、タンクが引かれたような気がしたんですって。 振り返ってライトを照らすと、そこは漆黒の空間で何も無かったん ですって。引っ掛かるようなサンゴも、岩も無い。おかしいな?と 思いながら又浮上し始めたんだって。すると又引っ張るんだって、 何かが。又振り返って見ても何も無い。さすがに不安になった彼は スピードを上げて浮上したんだって。

 ようやく浅場迄戻って来て、月の光が差し込んで来る辺り迄来て、 彼はホッとした。そしたら又「グイッグイッ」とタンクを強く引かれて 彼はビックリしたらしい。恐くなって、ライトを二本使って辺りを 照らしたんだって。でも、やっぱりそこにあるのは虚無の空間だけ。 半ばパニックになった彼は、ほうほうの態で岸に上がり、今さっき迄 居た水面を隈無く照らしたのだけれど、やはり異状は無かったそうだ。

 閉鎖空間での怪奇現象。ものすごい恐かったんでしょうね。それ以来 彼は、ここでナイトダイブをニ度としなくなったそう。元々地元での 噂は知って居たらしいけど、彼はそれ迄信じていなかったんですって。 寧ろそんな噂を馬鹿にしていたらしい。

 今、彼は漁師を辞め、ダイビングショップのオーナーなのだけれど、 喜屋武でのナイトダイブだけは引き受けないそう。海水浴客や漁師の 間で、夜に海に出ると何かが引っ張る。いまだに喜屋武岬の周辺では 恐れられているそう。

 今日はこの位で。


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